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チタンサファイアレーザとは

チタンサファイアレーザとは、固体レーザの一種で、レーザ媒質に人工的に造られたチタンサファイア結晶を使用します。チタンサファイア(Ti:Al2O3)結晶は、機械的に頑強な結晶材料であり、溶融プロセスにおいて母材料のサファイア(Ti:Al2O3)結晶中のAl3+イオンを少量のチタン(Ti3+)に置換することによって生成させます。 Ti3+イオンは、チタンサファイアにおけるレーザ放射を担う発光原子です。

チタンサファイアにおける光吸収は、約400~約600 nmの広い波長範囲にわたっています。 同様に、670 nmから1100 nmまでの広い波長範囲にわたって発光が可能です。 670 nm以下のレーザ発振は、吸収帯の長波長端と発光帯の短波長端と重なり、さらにはTi4+イオンによる弱い吸収によって妨げられます。

励起光源としてはチタンサファイアの光吸収特性を考慮するとネオジムベースのDPSSレーザ(Nd:YAG、Nd:YLF、Nd:YVO4)の第二高調波である532・527 nmのレーザ光が非常に効率的であるため一般的に使用されます。

チタンサファイアレーザの共振器構造と挟線幅動作原理

実際の狭線幅動作と共振器設計についてMスクエアレーザー社製<SolsTiS>CWリング・チタンサファイアレーザで説明します。

レーザ共振器の縦方向周波数モードの簡略図
図1: レーザ共振器の縦方向周波数モードの簡略図
(L =ラウンドトリップ共振器長の半分、c =光速)

チタンサファイア利得媒体が適切にレーザ共振器内に配置され、レーザ発振閾値を超えるのに十分なポンプパワーが供給されるとレーザ発振します。 特別な設計がされていない限り、レーザは、図1に示すように、一般的に定義された等間隔の共振器周波数(縦モード)で発振します。

原理的に発振する可能性のある周波数の範囲は、チタンサファイア利得包絡線の幅によって決定され、実際に発振するモードはレーザ共振器の設計とポンプ出力によって決まります。 様々な光学素子を共振器に追加して、発振可能な共振器モードの数を制限することが出来ます。図2は、SolsTiS共振器のレイアウトと主要要素を示しています。

SolsTiS共振器内部レイアウトとリファレンスキャビティの概略図
図2: SolsTiS共振器内部レイアウトとリファレンスキャビティの概略図

1. 共振器

レーザ光を単一周波数で効率よく発振させるには、進行波のみを存在させる必要があります。 SolsTiSは、よく知られているボウタイ・リング(M1~M4の点線をつなぐと蝶ネクタイ型になる)共振器構造を採用しています。 これは、光学ダイオードとともに用いてリング共振器の発振を一方向に動作させ、その結果、変換効率の高い単一縦モード発振が得られます。

2. 複屈折フィルタ(BRF:Birefringent Filter)

波長選択のために、SolsTiSは複屈折フィルタ(BRF)を使用しています。 BRFは、複屈折性の結晶板で波長依存損失を利用して波長選択を行います。波長選択方法はBRFを回転させることによって行います。波長選択分解能は±0.5nm程度です。

3. エタロン

レーザ光の線幅を細く動作させるためには共振器内に薄いガラス板のエタロンを追加します。エタロンはBRF同様に共振器にスペクトル損失をもたらします。これは、BRFより周波数をはるかに狭くし単一縦モード(単一周波数発振)動作が可能で、エタロンの間隔を調整することで周波数を微調整することができます。しかし、アクティブな安定化機構がないとポンプ出力と外部振動、周囲温度または圧力の変化のような外部要因の大きさに応じてモードホップ、マルチモード動作することがあります。 長時間の単一縦モード動作のために共振器内のエタロンに電子サーボロックを追加します。エタロンの間隔をディザリングすることで最も近い縦モードおよびサーボループの捕捉範囲内にロックし単一縦モード動作を維持することができます。

4. 共振器長制御

コンピュータ制御のPZTマウントミラー(図2のM3ミラー)によって、SolsTiSの共振器長を正確に調整することができ、縦モード周波数を正確に微細調整することができます。 エタロン電子サーボロックが動作していると単一縦モード動作を維持しながら共振器長を変更して周波数の調整または掃引が可能です。SolsTiSでは、デュアルスタックPZTを1つの共振器ミラー(M3)に採用しており、1つのPZTは周波数スキャン専用で、もう1つは周波数ロック専用のPZTです。

5. リファレンスキャビティ(ファブリペロー干渉計)

極挟線幅が必要な場合は、高い安定性と高いフィネスを備えたリファレンスキャビティを外部に追加します。 SolsTiSの内部共振器をこのリファレンスキャビティ(温度制御された一体化密閉魔法瓶構造で光学部品は全てインバーに搭載)にロックすることで、線幅を50kHz未満(測定時間100 usにおける絶対値)に減らすことができます。

6. 外部信号による絶対周波数ロック

SolsTiSの絶対周波数ドリフトは非常に低く、通常<100MHz / hr /℃ですが、適切な周波数誤差信号を入力することで原子吸光線や高精度波長計などの絶対周波数にもロックできます。

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